糖尿病の治療目的
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合併症の発症・進展を防ぐこと
★血糖や体重だけでなく、
血圧や脂質の管理が重要。
◆糖尿病の慢性合併症について◆
1. 神経障害について
両足先から起こるしびれ・痛みがないかきちんと問診し、初診時および1年に1回は振動覚とアキレス腱反射の検査をする。
2. 網膜症
早期発見するため、初診時およびその後も最低1年に1回は、眼科受診を勧める。
3.腎症
早期腎症(糖尿病腎症第2期)のうちに診断することが重要。3〜6カ月に1回は随時尿で尿中アルブミンの定量とeGFRの検査をする。
4. 他の腎疾患の併発
5. 細小血管障害
発症と進展を防ぐには、
●血糖(HbA1c 7.0%未満)、
●血圧(130/80mmHg未満)、
●脂質(LDL-C 120mg/dL未満)のコントロール、
●禁煙
が重要。
◆「細小血管合併症」◆
神経障害、網膜症、腎症が含まれ、血糖コントロールが不十分な場合は糖尿病発症後から徐々に出現する。
患者に「しめじ」と説明
「し」は神経障害、
「め」は眼で網膜症、
「じ」は腎症
を表します🍄🍄
出現する順番も
「し」→「め」→「じ」の通りです。
「し」の神経障害
下肢のしびれや痛みの訴えに敏感に神経障害が生じると、両足の指先がしびれたり、ビリビリしたりします。
糖尿病では、神経障害は手から先に始まることはなく、両足の指先や両足の裏から生じます。
初期の症状では足がつることもあります。
神経障害が出る人は糖尿病患者の約半数程度。
血糖コントロールが不良な場合3~5年後に表れる。
初診時とその後も1年に1回は、下肢のしびれや痛みの有無について問診し、アキレス腱反射と振動覚の検査をしましょう。
神経障害の簡易診断基準
●自覚症状、
●両側アキレス健反射の低下または消失、
●両側内踝の振動覚の低下、
このうち2項目以上が陽性でしたら糖尿病性多発神経障害と診断できます。
!注意!
糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定する必要がある。
長期間血糖コントロールが不良な場合、
自律神経障害を合併することもあります。
●起立性低血圧(立ちくらみ)、
●排尿障害、
●下痢と便秘の繰り返し、
●勃起不全(ED)などがあります。
根本的な治療は難しく、なるべく良好な血糖コントロールを目指しながら、対症療法がメインとなる。
糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準
■必須項目
以下の2項目を満たす。
1. 糖尿病が存在する
2. 糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定し得る
■条件項目
以下の3項目のうち2項目以上を満たす場合を「神経症状あり」とする。
1. 糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症状
2. 両側アキレス腱反射の低下あるいは消失
3. 両側内踝の振動覚低下
■注意事項
1. 糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症状とは、下記の2項目を満たす。上肢の症状のみの場合および冷感のみの場合は含まれない
(1)両側性
(2)足趾先および足底のしびれ、疼痛、異常感覚のうちいずれかの症状を訴える
2. アキレス腱反射の検査は膝立位で確認する
3. 振動覚低下とはC128音叉にて10秒以下を目安とする
4. 高齢者については老化による影響を十分考慮する
■参考項目
以下の参考項目のいずれかを満たす場合は、条件項目を満たさなくても「神経障害あり」とする。
1. 神経伝導検査で2つ以上の神経でそれぞれ1項目以上の検査項目(伝導速度、振幅、潜時)の明らかな異常を認める
2. 臨床症候上、明らかな糖尿病性自律神経障害がある。しかし、自律神経機能検査で異常を確認することが望ましい
「め」の網膜症
網膜症を見逃さないため、初診時およびその後も1年に1回は必ず眼科受診を勧めましょう。
網膜は、ものを見るために最も重要な部分。
糖尿病ではこの網膜が障害されてしまします。
人間ドックの眼底検査
無散瞳型眼底カメラによる撮影を受けたりしていても、これでは眼底の一部しか写りません。
網膜症は、毛細血管瘤(小さい血管のこぶ)から始まるため、眼科を受診し、散瞳薬を点眼して、眼科医に直接診てもらわないと、網膜症は評価できません。
また、眼底出血は眼球の周辺部から始まるので、かなり眼底出血が進まないと視力に影響しません。そのため、健康診断で定期的に視力検査をしていたとしても、早期発見には意味がないのです。
日本人の成人失明原因の第3位は糖尿病網膜症
年間約3000人が糖尿病で失明しています。
失明を防ぐためには、HbA1cを7.0%未満に保つことが重要となります。
眼科と内科にきちんと通院して治療を継続していれば失明は避けられます。